『やっぱ俺、ダメだー...。』
彼とカラオケで歌った後、
よく行く都内の温泉施設へ電車で行こうとしたとき。
彼は改札前で頭を抱えながら、そう言いました。
カラオケで歌っているときも、歩いているときも、
彼は笑顔を見せてくれることはありませんでした。
当たり障りのない話を振っても一言二言で終わって
しまう状態で、ずっと何かを考えているような顔でした。
カラオケ後、オレが苦しめてるんだよなと心配になって
「やっぱオレのせい、だよな...」
なんて言った後の彼の言葉でした。
電車移動はやめて、高層ビルに挟まれた夜道を
散歩しながらの、ポツリポツリとした会話になりました。
『やっぱり今の気持ちじゃ付き合っていけない。
一旦別れて距離を置きたい。』
それが彼の想いでした。
あの日から1ヶ月近くたっても変わらなかった
ってことは、やっぱり今はもう難しいんだろう。
「...じゃぁ、そうしようか。」
オレ自身別れるのは苦しくて嫌だけれど、
このまま続けて彼を苦しめてしまうのはもっと嫌だった。
なにより、彼の笑顔が見れないのがオレも一番苦しい。
だから、オレはそう答えた。
ひと月前のあの日、彼はこんな話をしていた。
『別れてからは、お互い別の好きな人が出来るかもしれない。』
『もしかしたら別の人と体の関係を持つかもしれない。』
だからオレは、
「気持ちの整理が付くまではそういう行動を取らないで欲しい」、
「気持ちの整理が付いたらオレに教えて欲しい」、
ってことだけはこのとき約束してもらった。
勿論ヤキモチが拭いきれない部分も多かったのだけれど、
何よりも「そんな軽い気持ちで付き合ってたのか!」
と軽蔑してしまいそうで嫌だったから。
その後、オレはちょっとした仕事関係のバカ話を切り出した。
「仕事も恋愛も、ある部分じゃ一緒だよな」って思った話。
そうしたら、彼も仕事の話をしてくれるようになった。
この日、初めて彼は笑ってくれた。
その笑顔。
君の笑顔を見れる時間が、オレは大切だったんだ。
本当に、本当に嬉しかった。
ようやく見れたその笑顔で、一度別れるという判断は
良かったのかもしれないと思えた。
その後も、散歩しながら色々話した。
今までの楽しかった想い出のこと。
これから一緒にやりたかったことや行きたかったとこ。
彼が自分本位で申し訳ないって思ってること。
オレが彼と出逢ってから人生を楽しめるようになったってこと。
彼がオレに感謝してるってこと。
一通り歩いた後、オレは無理矢理笑いながら言った。
自分で言ってて未練ったらしいなって思ったけど、
これが今のオレが言える精一杯の言葉だった。
「オレと別れたこと、絶対後悔させてやっから。」
「気持ちの整理がついた後もオレへの気持ちがあったら
戻っておいで。いつでも受け入れっから。
でもオレも気持ちが他へ移っちゃうかもしれないから、
お早めに(笑)」
結局最後は仕切り直しで温泉施設で風呂とメシ。
そこでも色々と話した。
『付き合い始めたばかりの頃、最初は笑ってくれなかったんだよ。
付き合う時間が経つにつれて、笑ってくれるようになってった。
俺と出逢って人生が楽しめるようになったってのは、
そういうことだったんだなって思った。』
風呂に浸かりながら言われたそんな言葉は、
なんだかオレの心に強く刺さってる。
本当に、そういうことなんだよ。
君がオレに生きる楽しさを教えてくれたんだ。
よく歌であるけれど、色褪せてた世界が
本当に色鮮やかになっていったんだ。本当に。
2393日目。約6年半。
だいぶ長いこと付き合ったね。
今までありがとう。